現在、導師イオンと私はマルクトの陸上走行戦艦タルタロスに乗りキムラスカを目指している。
ダアトからケテルブルク経由でマルクトに行くと知った時は、少々驚きを感じた。
何故、そんな遠回りを……と思ったのだが、どうやら、ケテルブルクにタルタロスを一時的に置き
ダアトからは、小型高速船舶艇でケテルブルクへの移動だった。
陸上走行戦艦とは言われては居るが、水上移動も可能だそうだ……
あのネクロマンサーが少々得意げにそう話してくれた。

ケテルブルクからマルクトに到着するまでになんら問題の発生は無く……
強いて言うなれば、導師イオンが子どもの様に無邪気にはしゃいでいたと言う事だけ。

タルタロスの水上移動は、お世辞にも早いとは言えなかったが……数日でマルクトの首都
グランコクマへ到着し、導師イオンはマルクト帝国の皇帝ピオニー9世と面談へとなる。
無論私は、導師守護役とは言え人払いをしてしまった皇帝と導師の会話の場に居る事など出来ない為
部屋の前で、マルクト兵士と共に待機していた。
そのマルクト兵士は、なにやら緊張していた様だが……なかなかにマルクトの兵士は、鍛錬と実践を積んでいるのだろう。
緊張を張りすぎる訳でもなく適度な緊張を持って勤めていると分かったからだ。

ピオニー9世との会話が終わった後に通された部屋を一応調べながらにベットに腰掛て、
此方を不思議そうに見る導師イオン。そんな不思議そうな顔をしないでください。
と、言うか導師がこうやって他国に非公式に来る危険性を分かってください。とは、言わない。
その危険性を排除するのが、導師守護役なのだから。

あぁ、それにしてもどうなるのだろうか?
あのモースには、今のところ真実の情報を流してはいる。
流石にあのモースといえども、マルクトの首都で問題を起こせばどうなるかわかるだろう。
案の定、モースからは、現状維持と鳩が飛んできた。
さてさて、タルタロスでの移動になってからは、虚実交じりの報告書を書かねばならないのか……
と、思うと溜息が出てしまう。

それにしても思うのだが、あのネクロマンサー……名代役務まるのか?
本当に心配である。







「アニスってなんだか、あれですね」
「? あれとは?」
「お母さんってヤツみたいです」
「…………導師イオン」
「はい?」
「失礼を承知でいいますが……殴っていいですか?」
「だ、ダメです! ご、ごめんなさい!」