あぁ、気づいていたよ。
だが、気づかない振りをして被害者面してた。
だってそうだろう? その方が、精神的に楽だったのだから。
ルーク・フォン・ファブレ。
キムラスカ=ランバルディア王国第三王位継承者。
まぁ、元と言った方が正しいのか正しくないのか……
現在の俺は、ローレライ教団神託の盾特務師団長と言う役職についている。
名前も、ルーク・フォン・ファブレではなく……何の皮肉かアッシュ。
聖なる焔の意味を持つルーク。その燃え滓を意味するアッシュ。
ヴァンの野郎も知っていてこの名を俺に与えたのだろう。
そもそも、俺がローレライ教団に来たのはヴァンに唆された……
いや……元々俺の心が弱かったのだろう、ヴァンの話に流され着いて来てしまった。
そして、俺の身代わりとしてレプリカが生み出された訳だ。
それだけならまだよかったのだが……その後、俺の体は様々な実験を受けた。
と、言っても解剖されたりなどはしていない。後で聞いた話だがモースの野郎が、実験中止させたらしい。
その後だ。何もわからん。素人に毛が生えた程度の俺をヴァンの野郎は、神託の盾に投げ捨てた。
男ばかりの神託の盾。当初の俺は十歳。普通の十歳のガキよりは体力が少しある程度。
思い出したくはないが……言うなれば、襲われた。文字通りな。
その後、必ずといっていいほどにヴァンに刷り込まれた訳さ。
何を? 聞くなよ。わかるだろう?
月日が流れる中で、俺は次第にレプリカを恨み憎んだ。
原因は、己だと忘れて恨んだ。そして、力を求めた。
力を手に入れてまずはじめにやった事は、俺を襲ったヤツラをぶちのめす事。
その後は、あんまり覚えちゃ居ない。いつか、レプリカの野郎を殺す事だけ考えていた。
俺の居場所を、奪ったレプリカ野郎を……
日々その思いが募る中、とある日モースの野郎に呼び出された。
何やら知らんうちにあの……肉達磨と試合する事になる。
結果は知っての通り。負けた訳だ。負に落ちんがな。
負けは負け。賭けはあの肉達磨の勝ち。
しゃくだが、肉達磨の言うとおり『今までの事を深く考えた』
考えと共に、色々思い出した訳でもある。
結局はだ……ヴァンに唆されたとは言えだ。俺が原因である事に間違えはなかった。
その答えが、導き出された後はそれを認めなくない俺は、苛立ちを隠せなかった。
丁度その時期に、アリエッタが尋ねてきてくれてな。
まぁ、六神将として心配してくれたんだろう。時折シンクやイオンが来るのが良くわからんが……
構うなと何度言っても懲りずに来るアリエッタにとうとう感情を爆発させた。
今思うと凄まじくみっともない。に、くわえて恥かしい。穴があれば入りたい。
何を言ったのかは、覚えちゃいない。覚えてない。おぼえてねぇってんだろ!
その後で、アリエッタはキョトンとした顔して笑って……
「アッシュです。ルーク。とか、じゃない。とか、わからない。
アッシュは、アッシュ。ルークは、ルーク。アリエッタ。ルーク、会った事ないから、わからない。
でも、ルークは、イオン様と一緒。だから、ルークは、アッシュのおとーとです?」
なんで最後が疑問形なのかわからなかったが……まぁ、それで救われたとでも言うのか……
気分が楽になったのは覚えてる。
でも、まぁ結局俺が『原因』だって事にはかわりねぇ。
なら、だ。原因なら原因なりに、解消に向かって進むしかねぇ。
不本意だが……あの肉達磨の野郎に加担する事にした。
まぁ……喧嘩を売るだけだけどな。
肉達磨にも、ヴァンの野郎にも……
そして、スコアにも……
気づいたら肉達磨が話す。ルークの様子を聞くのが当たり前になってたのは何故だ?
わからん。