こんばんは。はじめまして。

 えー、ローレライ教団が大詠師モースです。

 えぇ、お前だれだ? 本当にモースか? と思いでしょうが……

 モースであってモースじゃないのが、今の私です。

 えぇ、ほら、よくあるじゃないですか。

 トリップとか憑依とか言うジャンルが……

 えぇ、まさに其れです。

 結果的に言うなれば、私は憑依モース。

 憑依してる私の本名は「      」

 出身は日本。年齢は二十歳……

 まぁ、そんなどうでも良い事はおいて置いて……



 なんでモース? ほら、普通なら憑依とかだとルークとかさぁ

 アッシュとか……物語の主人公になるのがセオリーじゃないですか? ねぇ?

 それが……死亡フラグ立ちっぱなしモースって……

 私何か悪いことしましたかねぇ?

 泣きたくなります。

 日本に居た頃の私は、確かに太り気味と健康診断で診断されていましたが……

 なんですか、この贅肉の塊。贅肉モース。ブタモース。

 一番驚いたのが、朝食から何この超ゴージャスな食事。

 えぇ、その点についてはもうやめてもらって……

 豆の煮た物とタマゴの白身と温野菜だけにしてもらってます。

 ベジタリアンって訳ではないです。白身食べる時点で。



 とりあえず、モースの体は非常に重い! ちょっと走るだけで息切れする!

 階段を上がるだけで間接が悲鳴を上げる! 太りすぎだこのボケ! といわれてもしょうがない。

 なので、モースになって数日の私はダイエット大作戦を計画し実行する事にしました。

 結果……体型は変わりません。今までの贅肉が全部……





 筋肉





 になってしまいました。巨大な戦斧だって片手で振り回せます。

 さて、私の愚痴もコレまでにして話を元に戻しましょう。

 この世界は、漫画やプレイステーション2のゲームになったテイルズ・オブ・ジ・アビスの世界。

 現状として、オリジナルイオンはまだ生きており……不治の病とやらに係りもうすぐ死ぬ。

 わーたしとしては、モースが毒でも盛ってんじゃねぇの? と、当時思ってましたが……

 モースの知識や記憶の中には、それらに関して一切無く。予言を完全実行。それしか頭にない。



「モース。何をブツブツ独り言を言っているんです? 脳が腐りましたか?」



 そう声をかけるのは、ベットに横になった緑色が印象的な少年。

 オリジナルのイオン。

 そんなイオンの言葉に、ため息一つ。



「導師イオン。そろそろですかね?」



 そろそろ。の部分にイオンは、眉を小さく顰める。

 それは、私がイオンの言葉を無視したからなのか近づくイオン自身の死についてなのかは、わからない。



「………」

「アリエッタには、告げないので?」



 アリエッタという名前に、ますます眉を顰めるイオン。

 そんなイオンを無視した形で、口を開く。



「この先の事を考えれば、伝えない方が良いかもしれませんが……嘘は時間が立つに連れ真実になりますよ」



 だから、真実になった頃に嘘がばれた時に受ける当事者の心へのダメージは大きい。



「伝えた所でどうなるんです。僕はもうすぐ終わります。僕じゃない僕が生まれて僕に成り代わる」

「それがどうかしましたか?」



 私のその言葉に、イオンはギロリと私を睨む。

 視線で殺せるなら多分、今私は殺された。



「貴方が死ねばそれは隠され、貴方の代わりが生まれる。それじゃぁ貴方が報われない。

 貴方は、誰にも看取られず果てて……本当の貴方は忘れ去られる。それはあまりに惨いじゃないですか。

 私は、貴方が死んでも覚えてはいます。でも、一番貴方を心配している人は?

 本当の貴方を失ってもそれを知らせずに居る事が、一番大事ですか?」

「………アリエッタが、悲しむのは嫌です。其れくらいわかりませんか? この狐目」

「……貴方が亡き後、導師守護役は変更し内部をいろいろと鞍替えします。

 ますます、貴方の事を知る者は遠ざかる。そして違う貴方が貴方となってしまう」

「わかってますよ」



 イオンは、シーツを力強く握り締めた後でため息を一つつく。

 年相応でないその姿に、私は心の中で眉を顰める。



「大詠師モースとしてでなく、ただの人生の先輩として言って置きます。
 伝えるもん伝えとけや。悲劇の主人公ぶってもなんもかわんねぇんだよボケ」



 私の言葉に、イオンは唖然としてこちらを見た後で殺人視線を私に送る。

 子どもの癇癪染みた視線なぞ痛くも痒くもない。

 まぁ……同情だけしか出来ないのが……他人ってヤツであって……本人にはなれない。

 だから、こんな言葉を言う事が出来るんだろうと自己嫌悪。

 不意に、扉を小さくノックする音が聞こえる。

 イオンが、何か言う前に私が「どうぞ」と、告げると扉は小さく開いてピンク色の少女が、ひょっこりと顔をのぞかせる。

 それに、イオンは驚いた様な表情を浮かべた後で、再び私を睨む。

 しりませんがな。



「さてと、私は書類整理に戻ります。アリエッタ。今日は導師イオンの体調が優れている様だ」



 アリエッタにそう告げた後で、イオンを見やり一度お辞儀をした後で退室する。

 今、イオンがアリエッタに真実を告げるかどうかは知らない。

 どちらにしろイオンの自由だ。

 とりあえず、予言なんてどうでもいい。まだ人生を走り始めた少年があんな老成し諦めに追い込む予言なんぞ無い方が良い。

 大詠師モースとして、何が出来るのだろうか。

 歴史は、やはり歴史どおりに進むしかないのだろうかね?

 ヴァンのレプリカ計画。アッシュとルーク。ローレライ。

 主人公に憑依してたならこんなめんどくさいこと考えなかったのかもなぁ私。



 とりあえず、予言は要らない。それだけは確実にわかる。