ルーク・フォン・ファブレの短い旅行は、終了を迎えた。
タルタロスが無事、キムラスカ=ランバルディアの首都バチカルに到着したからだ。
無論、到着するまでの間にいろいろと出来事があった。
六神将の六人のうち四人という大半が、タルタロスにダアトの御旗を掲げたフレスベルグで襲来。
初めて出会った同じ存在である、鮮血のアッシュの変わり様……やたら自分を心配してた。
六神将の仮代表として、リグレットとジェイドが何事か話し合い、そのまま去っていった六神将。
アッシュが、やたらガックリしていたのが印象的だった。

途中で、六神将の一人アリエッタと……ファブレ家の使用人で親友のガイが合流。
ガイが、なぜかズタボロだったのが印象的だった。
光を見た。パァッと広がっていくんだ……と、ガイは俺にそう告げて気絶した。
いったい何があったんだ? ガイ。そして腰に差してるのってガイラルディア?

結果的にいうなれば、歴史はひどく変わっている。
本当ならば、タルタロスは六神将に奪われ、船員だったマルクト兵士はジェイドを抜かし死亡していたはずだった。
本当ならば、アリエッタは敵として俺達の前に現われるはずだった。
本当ならば、国境でヴァン師匠と出会いアッシュに斬りかかられるはずだった。
それだけを除いたとしても、俺が経験してきた『道』は、ひどく穏やかな『道』に変わっていた。


「良く無事で戻った。我が甥。ルーク・フォン・ファブレよ」

キムラスカ=ランバルディアが国王。インゴベルトは、礼を取るルークにそう声をかけた後で、自由にして良いと告げる。
そこで、やっとルークは、顔を上げ立ち上がった。

「して、ルークよ。導師イオンとそのマクルトの兵士は誰だ?」

インゴベルトの質問に、ルークはジェイドとイオンから聞かされていた和平調停の事を自分なりに説明する。
その説明を聞き、インゴベルトはジェイドに対し、面を上げよと告げる。
その言葉に、恭しく顔を上げるジェイド。そのジェイドを見てインゴベルトは顔を少ししかめた。
ジェイドが、あのネクロマンサーだと分かったからなのだが……それを言葉には出さない。

「して、マルクトの兵士よ。導師イオンを連れこのキムラスカ=ランバルディアに何用か?」

ジェイドは、インゴベルトに向かい口を開く。それは、先ほどルークが話していた和平調停の事柄を
ルークより詳しく説明し、何故導師イオンを連れていたのかについても説明する。
その説明が終わるや否や、インゴベルトは立ち上がり……

「マルクトからの和平の使者よ。話は分かった。このキムラスカ=ランバルディアでも貴国との和平は
予定していた事だ……何せ、いま世界は、些細な事で争いあっている暇はないのだからな」

後は、文官と打ち合わせせよ。と、告げるとインゴベルトは謁見の間を後にした。




その後は、とんとん拍子で物事は進んでゆく。
あっさりと進められる和平。和平後は、この外郭大地を支えているセフィロトツリーに関しての問題やら何やらが
話し合われ物事は進んでゆく。
幾ばくかの名前も知らない両国の臣下の数名が、スコア云々と言っていたが……
結局は、導師たるイオンの言葉と、次に権力のある大詠師たるモースにより……
前者は、言葉で、後者は主に肉体言語で、その臣下たちを説得。

ヴァンとティアにいたっては、ティアのファブレ家の無断侵入かつ敵対行為に関しては、
すべてが終わってからの刑罰となった。
何せ、ヴァンとティア以外に、セフィロトツリーの制御盤を開く事は出来ない為である。
なお、ヴァンにいたっては、武器を取られ簀巻きに近い形で束縛されていたりする。

また、外郭大地を支えるセフィロトツリーに関しては、耐久年数がもう限界の為、修理も出来ない。
失われた技術を今の技術で直す事は到底不可能だったと言うわけだ……
ベルケンドやらの技術員達が、セフィロトツリーに関して何事か研究していたが、無駄。

結果的に、外郭大地をクリフォトへ降下させる事となった。
なお、その前にアグリュゼスの人民救出は、キムラスカ=ランバルディアとマルクトの両方で進められ
失われた人民は少ない。失ってしまった人民は大半が、アクゼリュスから救出後に重度の瘴気に犯され死んでしまった。


「なんか、すごく俺取り残されてる気がしてしょうがない」

と、ルークが怒涛のごとくに流れる事柄を見てそう思う。
しかしながら、ルークにはセフィロトツリーを操作し無事に外郭大地を降下させる任務を請け負った為
前の歴史では、出来なかった事をしつつ誠意的に任務をこなすのだった。




「やぁ、ヴァン君元気?」

タルタロスに設置されている牢獄の中に居るヴァンにそう声をかけたのは、モースだ。
そう話しかけてきたモースを見て、苦々しい表情を浮かべるヴァン。
何せ長い年月かけて実行しようとしていた計画がすべて台無しにした存在が目の前に居るのだから、
そんな表情になるのもしょうがない。

「そうそう。君にいい話があるんだ。何、君の大切な妹に関してなんだ」

妹の言葉に、ヴァンは目を見開きモースを見やる。

「君が、このまま大人しくセフィロトツリーの制御解放を行ってくれれば
君の妹……ティア・グランツの罪は、軽いものにしてくれると、インゴベルト陛下からお言葉をもらったよ。
まぁその逆も叱りで……もし、有事にはティア・グランツは即刻刑罰を受ける。
無論、君も受けるね。何せ、王族に連なる一族の屋敷に不法侵入に暗殺疑惑。挙げたらきりがないからね」

そう告げた後で、モースはその場を後にした。
その場に残るのはヴァンだけで、ヴァンは無言でうなだれるだけ。
ヴァンも所詮人の子。唯一の妹が大事という事には変わりないという事だ。







「いや、まさかここまでとんとん拍子に物事進むと思ってなかった」
「コレで一安心……だと、思うんだけど……嫌な予感がしてしょうがないなぁ……」
「クリフォトの瘴気浄化だってどうにかしないといけないだろうし……」
「ローレライの解放に、ルークとアッシュの大爆発……」
「ん? 瘴気にいたっては、汚染された第七音素だから、ローレライに頼めば大丈夫なのか?」
「あーわかんないなぁ……ディストとジェイド……あとは、その畑に詳しい人物にがんばってもらうか……」