キムラスカ=ランバルディアが王。インゴベルトの娘であるナタリアは、ため息をひとつ付いた。
そのため息の原因は、様々ある。
ひとつ目は、己が先の外郭大地降下作戦等に参加できなかった事。
ふたつ目は、己が本当の『王族』では無い事。
ひとつ目の事に関してはしょうがないと言える。その代わりに外郭大地降下による
市民らの混乱を収める為に奔走した。

ただ、二つ目に関しては、もうどうしようもできない。
そもそも、二つ目の事柄に関しては薄々気づいていた。
何せ、母親の髪色は黒。父親たるインゴベルトの髪色は紅。
その二人の子たる自分が、何故金髪なのか……
そして止めと言うべきなのが、大詠師モースが、インゴベルトにその事実を告げてしまったと言う事だ。
ただ、モースは告げるだけではなく……ちゃんとフォローもしてくれた為。
今の自分を娘である事に代わりは無いとインゴベルトは明言したのだが……
王位剥奪はしょうがない事だった。

その後は、乳母の手で葬られた本当のナタリアの遺体を、ちゃんとした王家の墓所へ手厚く葬った。
ナタリアの名前も、その葬られたナタリアに返上するつもりであったが……
今更、本当の名前を呼ばれてもそれは自分では無い。生まれてから呼ばれてきた名前を変えるなんて無理だった。
だから、本当のナタリア様には悪いと思っているけど、
『ナタリア』たる私が死ぬまで私は『ナタリア』の名前を名乗らせて貰う事にした。
死後、『ナタリア』の名前は『ナタリア』様に返し、己は『メリル』として何処かの墓所に埋葬されるだろう。
己でそう決めて、すでに手はずも終えているのは、今の所己しか知らない事だ。

『ナタリア』の名前を汚さない。そう心に誓い今日も民の為に働こう。



「ナタリア。空を睨んで何をしている?」
「あら、ルー……アーク。何でもございませんわ。初心忘れるべからず。そう思い直していた所ですわ」
「? そうか。それにしても……良い天気だな」
「えぇ」
「ルークの野郎も今は何処にいるんだろうかな」
「わかりませんわ。でも、元気でいるのは間違いないですわね」
「だな」







注:アーク=アッシュ。