ルーク・フォン・ファブレと六神将の烈風シンクは、意外な所で鉢合わせした。
その場所は、エンケーブ。
ルーク・フォン・ファブレが、物語に巻き込まれた始まりの場所である農村である。
それは、まったくの偶然で、ルークが意図した訳でもなくシンクが意図した訳でもない。
ただ、本当に偶然で、二人はエンケーブで出会った。
何故か、同じく林檎を齧りながら。

「………しんふ?」
「………るんぐ?」

二人とも林檎を齧りながらお互いの名前を呼ぶ。その為に変な発音になり名前とも言えない言葉が漏れた。
とりあえず、二人は、近くにあった丸太に腰を掛けて林檎を食べきってしまおうと口を動かす。
先に食べ終わったのはシンクで、何故か得意げな表情……と、言っても仮面で隠れてしまっている為口元しか見えない。
にんまりとした笑みを浮かべながらルークを見やるシンク。
何処か悔しそうな表情を浮かべるルーク。

「で? なんで、王位三位のルークが居る訳? 護衛とか付き人とかは?」
「んぐ……いねぇよ。バチカルから飛び出てきたからな」
「……アッシュの若禿進行してそうだね。それより、一人なら僕と一緒に行かない?」
「ぁん? まぁ、別にいいけど……」

じゃぁ決まりだ。と、シンクは立ち上がる。つられる様にルークも立ち上がった。
特にやる事の無い二人は、さてどうしたものかと一緒にその場で悩む。悩みつつもう一度丸太に腰を掛けた。
結局、二人で悩んでみたものの別段目的の無い旅なので、早々どうするべきか思いつく訳もなかった。
それにつれなってなのかどうかは、しらないが……二人の周りに村の子供達が集まりつつある。
原因としては、エンケーブに来る珍しい旅人に興味があると言った所だろうか?

「おにーちゃんとおねーちゃん。何してるの?」

勇気(?)ある子どもが、二人にそう声を掛けた。
さて、おにーちゃんは分かるとしておねーちゃんって誰だよ? と、ルークは首をかしげたままシンクを見た。
シンクも同じ様に首をかしげたままルークを見る。
そして、二人とも同時にこう思う。

((はははは、ルーク(シンク)女に間違えられてる))

どっちもどっちだと言うのは、黙っておくべきだろうか?
ルークはルークで、臍だしの服ではなく、旅をするのに不自由の無い服装。
どちらかと言えば女性に見えなくも無い服を着ているし
シンクはシンクで、身体をすっぽり覆う様なダアトの紋章が入ったローブを羽織っている為体型が見えない。
つまり、二人とも見た目で判断された訳なのだが……

「ははは。どっちがおねえちゃん?」

とりあえず、シンクはそう尋ねてみると……子どもは、瞬時にルークとシンクを指差した。
正確には、子ども達の半分がルークをもう半分がシンクをである。
半分に分かれた子ども達は、こっちがおねーさんだよ! いや! こっちがおねーさん! などと言い合い始める。
そんな子どもの反応を見つつシンクとルークは、どっちもかよ。とため息を付く。

「おねにーさん達は、たびびと?」

どちらかが、おにーさんでおねーさんなのか結局決まらなかった子ども達は、よく分からない呼称で二人に尋ねた。
その尋ねられた言葉に、二人は頷く事で答える。おねにーさんって……どっちかにして……と、思ったかどうかはしらない。

「じゃぁ、たびのお話聞かせて!」

そんな提案に、二人は一度顔を見合わせた後で、シンクはため息を付きルークは笑顔を浮かべて口を開いた。




シンクの手には、木製のフルート。
ルークの手には、木製の大きめのリュート。
二人は、即興……とは、言わないが良く知った曲を子ども達に聞かせていた。
旅路の話を終えれば、二人にやる事が無く……丁度旅の途中で手に入れていた楽器を手にとり演奏を始めたと言う訳だ。
ただ、その曲が『大譜歌』なのは、きっとティアとヴァンぐらいしか分からないだろう。
演奏が、終われば子ども達と子ども達を迎えに来た大人たちが、二人に拍手を送った。

「またね! おねにーちゃん!」

大人に手を引かれながら、こちらを振り返り元気に手を振る子どもに、小さく手を振り返す二人。
既に陽は、落ちる寸前で、二人はとりあえず宿屋へと足を運ぶ。
宿屋に着けば、宿屋の親父が、らっしゃい! と、声を掛けてくる。
二人分の料金を支払い、案内された部屋のベットにすぐに横になる二人。

「演奏しながら旅するのってどうだ?」
「……悪くないね」

だろ? と、ルークは天井を見ながら笑った。

「朱翠楽想団。なんてどうだ?」
「ネーミングセンス無いね」
「うるせぇ……」
「まぁ、別にたった二人なんだし、団は要らないんじゃない?」
「それもそうか!」

こうして、二人は共に旅する事になり、今はエンケーブで眠りに付いた。




ただ、この朱翠楽想団が、しだいにメンバーが増えるのは今の二人には分からない事である。











ルークが、称号『リュート奏者』を手に入れた。
シンクが、称号『フルート奏者』を手に入れた。