セレニアの花が咲き乱れるタタル峡谷。
其処に、数人の人影と巨大な影が二つ。

一人は、キムラスカ=ランバルディアが第三王位継承者たるルーク・フォン・ファブレ。
一人は、神託の盾の一兵士であるティア・グランツ。
一人は、ダアト最高権威者である導師イオン。
一人は、導師守護役であるアリエッタ。
一人は、導師イオンとアリエッタの娘(と、書いて男の娘)であるイリィ。

巨大な影の一つは、ライガの皇たるライガキング。
巨大な影の一つは、ライガの女皇たるライガクイーン。

まったくもって共通点が無い様に見える面々が、賑やかにそして優雅にタタル峡谷と言う辺鄙な場所で
のんびりとお茶会を開いていた。




「でな? 俺たちは、何とかドラゴンルーラーを倒す事ができた訳だ」
「えぇ。きっと、この世界の人たちならばたった五人でなんて倒せない巨大で凶悪なドラゴンでした」

ルークが楽しそうに語る言葉に、相槌を打つティア。
その言葉を単純に聴いて、イオンとアリエッタは純粋に驚いた表情を浮かべ。
その娘(男の娘)たるイリィは、目を輝かせている。
ライガキングとライガクイーンにいたっては、身体をうずうずさせているキングをなだめているクイーンと言う構図が出来上がっていた。
どうやら、ルークの話を聞いてドラゴンルーラーと戦ってみたいらしいライガキング。
だが、ドラゴンルーラーは『この世界』の魔物で無い為戦う事は適わない。

「その時手に入れたのがあの槍だ」

と、ルークは近くの地面に突き刺していた槍を見やる。
その槍は、シンプルな作りなのだが……その槍自身が青緑の燐光をうっすらと放ちその存在を知らしめていた。

「竜槍スマウグ。あっちの世界じゃ何本か存在するらしいが。この世界じゃ唯一にして無二の最強の槍だと思うぜ」

自慢げに、そして何処か寂しげに言うルーク。
そんなルークに、イリィは無邪気に欲しい! と、元気いっぱいに告げる。
イリィの言葉に、ルークは苦笑しお前が、大きくなったらな。と、頭を撫でて答えた。

「此方に戻ってくる際。アチラにしかない武具を幾ばくか持ち帰れました……
正確には、私とルーク様が装備していた武具だけなんですが……」

この仕込み杖もその一つですね。と、ティアは無骨な杖を手に取り見せる。
イオンにそれを手渡すと、イオンは取っての部分と胴の部分を持ち取っ手の部分を軽く引いた。
杖の中には、レイピアが仕込まれていて。コッチの世界じゃ多分お目にかからない武器であった。

「さてと、俺が話す事はこれぐらいじゃねぇかな〜?」

次は、イオン達だぜ? と、ルークは太陽の様な笑みを浮かべながらに言った。


「そうですね。僕は預言で死ぬ事になっていました」

でも、生きてますけど。と、屈託の無い笑みで告げるイオン。

「元々、僕は死ぬつもりでした。世界と預言を恨みながら……でもですね……」

チラリと、アリエッタを見るイオン。その視線に気づいたのかアリエッタは少し顔を赤らめた。

「僕とアリエッタが、出会って一年経過した時に……えー……アリエッタに襲われました。性的な意味で」

今度こそ完全に顔を赤らめるアリエッタ。
どう見ても大人しそうなアリエッタの大胆すぎる行動に、ルークとティアは驚いた様な表情を浮かべた。

「で、さらに一年経過して……イリィが生まれた訳です」

美味しそうにタルトを頬張るイリィを見やり笑顔を浮かべるイオン。

「まぁ、それじゃ預言も何も覆らないんですが……
ほら、イリィは可愛いじゃないですか。目に入れても痛くないですってぐらいに。
で、僕死んだらアリエッタとイリィ……まぁ、お義父さんとお義母さんが居るんですけど……
この二人だけが残って僕だけ死ぬってなるともう心配で心配で……預言なんて知るかぁ!! 僕は生きるんだッ!!」

と、気合と根性で、気が付いたら預言回避してました。
と、あっけらかんとして言うイオン。でもなんで預言回避できたか分からないんですよね〜。
結局僕のレプリカは、生み出されてるんですが……あれですね。気合と根性と家族愛があれば預言なんて吹き飛ばせますね。

と、頷くイオンを見て。ある意味すげぇなコイツとルークは可笑しそうに笑う。
ティアはティアで、唖然とした表情を浮かべるが……それが、人の意思の力ですか……
と、あっちの世界での旅を思い出して、ルークと同じ様に笑顔を浮かべた。

「何はともあれ。僕はアリエッタとイリィに救われました」

純粋な笑顔を浮かべてそう締めくくった。


ありえないお茶会は続く。
負の感情なんて無い笑顔と賑やかな笑い声と面白くも己が体験してきた物語を語りあう。
そんなお茶会。









「この屑が!!! こんな所にいや」

「啼け! スクリィイマァァァア!!!」

ルークの抜いた漆黒の刃を持つ剣が、血も凍る様な叫び声を上げいきなり現われたアッシュの身をすくませる。

「玄武術が、最強術<クイックタイム>発動!!」

ティアが、アチラの世界で、最強と言われる術を発動する。
その内容は、味方全ての素早さを最大限まで引き上げ、必ず先制攻撃を行える様になるモノだ。

「少し。頭冷やしましょうか……裏ダアト式武術……」

イオンはバックに黒い闘氣を背負いながらに身を沈める。

「………来たれ。魔狼の咆哮……」

アリエッタはアリエッタで、この世界ではない譜術ではない術を唱える。

『オオオオオォオオン!』

ライガキングの身体を漆黒の雷を纏わせて天を仰ぎ啼く。

『…………』

ライガクイーンは、その巨大なアギトにそのアギトに見合うほど大きな雷球を発生させている。


この時、アッシュは思った。
あ、やべ。俺死んだ?


「涅槃のカノン!!」

まず、イオンの攻撃で、アッシュは高く宙に舞う。

「ブラッディ・ハウリング」

次に、アリエッタのこの世界のではない同名の術が発動し、甲高く恐ろしい声を上げながら黒い影が何度もアッシュに襲い掛かる。

『オォオオン!!!!』

いまだ宙に浮かんでいるアッシュに対し、ライガキングの放った巨大な黒い雷が、天から撃ち落された。

『ガァアアアア!!!』

そして、地面に打ち付けられた瞬間。ライガクイーンの口から雷球が放たれ後ろに吹き飛ぶアッシュ。

「抜刀………燕返し!」

いつの間にか、アッシュの着地点まで移動していたティアが、仕込み杖からの神速の居合い抜きを放つ。

「とどめだぁあ!!! 無双三段!!!」

竜槍スマウグが、アッシュを地面に叩きつけさらに鋭い突きを放ち、そして槍自身を大きく回転させアッシュを空の彼方へと吹き飛ばした。





「よし。お茶会を続けようぜ。ティア! すまねぇが、紅茶淹れて直してくれ!」
「アールグレイでよろしいですか?」
「あぁ!」

「そういえば、アリエッタ。アニスからお茶会用にってお菓子頂きましたよね?」
「あ、はいです……。先に用意、されてた、から。出し忘れて。ました」
「わぁ! パンプキンパイだぁ〜!」

「グルル」(眠い!
「クルルルル」(お眠りになってくださいな。







お茶会はまだまだ続く。







この短編のキャラ説明。

ルークとティア。ネタのロマサガ3世界から帰還した二人。

イオンとアリエッタとイリィ。ネタのアリエッタ二十歳ネタ。
イリィの年齢設定がネタのを適応すると可笑しい為。この話ではイリィは四歳。

ライガキング。現在連載中のライガの王様。まだ、話ぜんぜん進んでないのに登場。







なんとなく書きたくなって書いてみた訳ですが……後悔はしていない! でも反省はしている! でも謝らない!
アッシュの扱いのひどさは、ギャグ要員としてのひどさです。普通にあの連撃くらってもアッシュ生きてます。
寧ろピンピンしてそのままナタリアの所にでも行きそうです。